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どうして皮膚を縫う時に溶ける糸を使わないのか、その理由

2018年10月31日

院長藤田です。

今日の午後は手術でした。

当院は毎週水曜日、土曜日の午後に手術をしています。

 

手術ではたいていの場合、局所麻酔の下、皮膚を切って、最後に糸で縫合をします。

切った皮膚が癒合するのはだいたい1-2週間かかりますので、その後に抜糸をいたします。

 

「どうして抜糸がいらないように、とける糸で縫ってくれないのだろう?」そう思うことはありませんか?

 

この世にいわゆる「溶ける糸」があることはご存知とおもいます。これはたしかに、抜糸がいりません。

お産のときの会陰切開や、歯医者さんでの口の中の縫合などでは、溶ける糸で縫うことが多く、ご経験のある方も多いかと思います。

ではなぜ、私は(私だけではなく多くの外科医は)抜糸する糸をわざわざ使うのか。

 

理由をご説明したいと思います。

 

まず、溶ける糸はなぜ抜糸がいらないのか。

溶ける糸といっても、自然に全部溶けて、消えてなくなるわけではありません。

糸が水分に触れていると、加水分解されて、その構造がもろくなり、つまり体内に入っている部分だけが、融解します。

それで、自然にぽろっと糸が取れる仕組みになっております。

 

実は、この糸の分解産物が曲者なのです。

分解産物により、炎症を生じるのです。

 

これが皮膚表面の縫合に使いにくい理由です。

皮膚の目立つところを溶ける糸で縫うと炎症を起こして、縫合部に赤みがでてしまうのです。

 

炎症を起こすと「炎症後色素沈着」をきたすので、縫合した部分が目立ってしまう結果となるわけです。

多少炎症を生じても傷跡が目立たない、口の中や会陰部などでは溶ける糸で縫合してもOKですが、目立つ部位はNGなわけです。

 

では我々形成外科医は溶ける糸を使わないのでしょうか。

いえいえ、多用しています。

それは皮下縫合(真皮縫合)で使用します。

皮膚の下での縫合には吸収糸のほうが多くの場合優れており、皮下縫合の合併症である縫合糸膿瘍(皮下縫合の糸への感染)リスクを減らせることが分かっています。

 

我々形成外科医は、小児の縫合などで、抜糸したくない場合には

皮下縫合(真皮縫合)を密にして

①表面は縫わない

②あるいはテープ固定

③あるいは皮膚用接着剤で固定

などの方法を用います。 ちょっと手間ですが、きれいに治る方法です。

 

というわけで、今日も傷がきれいに治る方法を追い求めて、手術をしております。

抜糸をするのは、反応の少ない糸を使用することで、傷あとをきれいに治すため、と、思っていただければよろしいかと思います。

 

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