陥没乳頭
乳頭が乳輪より陥没している状態を陥没乳頭といいます。女性の2%ー10%程度が陥没乳頭といわれています(割合は報告により異なります)。
外見上の問題から、コンプレックスになりやすく、また機能的にも、授乳困難や、不潔になりやすい、将来的に乳輪下膿瘍をきたしやすい、などの問題があります。
乳腺外科や産婦人科でも治療の対象とされることがなく、受診先がわからず、一人で悩んでいる患者さんが多くいらっしゃいます。
原因
乳腺の発達と乳管の発達のアンバランスにより生じます。乳管が成長せずに、乳管周囲に線維性の硬い組織が付着していることで、乳頭を乳管が奥に引っ張っている状態です(原因について藤田の持論は末尾に)。
分類(Han and Hongの分類)
陥没乳頭には重症度があり、一般的に3つに分類されます。
グレード Ⅰ: 普段は陥没しているが、刺激をするとすぐに突出し、ある程度の時間は保持される
グレード Ⅱ: Grade Ⅰと同様に乳頭を突出させることができるが、維持できずに、すぐに陥没する
グレード Ⅲ: 用手的に突出ができない(刺激をしたり、引っ張ったり押し出したりしても乳頭がでてこない)
保存的治療
専用の器具で乳頭を吸引します。短縮した乳管を少しずつ伸ばす矯正効果があります。
「ピペトップ」という矯正器具を推奨しています。矯正力は強く、グレードⅠかⅡの場合にはかなり有効です。矯正のみで治療した場合は、乳管は完全に温存されますので、授乳の心配は最小限となります。毎日装着して1ヶ月ほどでだいぶ効果がでます。その後数ヶ月は維持のため矯正を継続します。
ただ、グレードⅢなどの重症の方が無理して使用すると陰圧が強くなりすぎて、水ぶくれができたり出血してしまうこともあり、継続困難な場合も多々あります。
手術による治療
乳頭が全く出てこないグレードⅢの陥没乳頭や、矯正治療で治癒しないグレード Ⅱの陥没乳頭は手術治療の適応です。
局所麻酔、外来通院で手術が可能です。
両側で1時間程度の手術です。
手術翌日(翌々日)、術後4日目、術後1週間、術後2週間で通院していただきます。
再発がないかどうか、術後半年までは時々診察を行います。
再発予防のため、半年間 乳頭の保護を継続します。
こちらもご参照ください:ブログ 陥没乳頭の手術治療について【図解】
こちらもご参照ください:ブログ 陥没乳頭の手術のダウンタイムは?~術前・術後スケジュールの御紹介~
手術の費用について
保険適用で手術を行っています。
3割負担、両側手術で、5-6万円程度の負担となります。
授乳する可能性のある年齢の方に限って保険適用が認められています。当院では45歳以上の方は自費での手術としています。
院長藤田の個人的見解
陥没乳頭、特に重度(グレード3)の陥没乳頭は先天性乳頭欠損と考えたほうがい良いのではないかと思っています。あるいは乳頭の形成不全です。一般にいわれている陥没乳頭の成因である、「乳管の短縮」は、原因ではなく、形成不全の結果だと思います。ただ、これを証明する方法も学説も今のところありません。論文を書きようもないわけです。せいぜい自分のホームページでこうして書くのみとなります。ただの持論です。
乳頭の組織がもともと欠損していますので、重度の陥没乳頭では、凹んだ乳頭を引き出して糸で固定するような方法ではすぐに後戻りしてしまいます。引っ張り出して止めても、支えとなる土台がないからです。乳頭そのものにボリュームが必要なのです。
重度の陥没乳頭手術は乳頭再建手術だと考えることが重要です。私が現在採用している酒井法は乳頭再建手術です。
酒井成身先生に手術をご指導いただき、本当に感謝しています。