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皮膚縫合の痕を残さないための工夫

院長藤田です。

今日は形成外科医が気を付けている、皮膚縫合の痕を残さない工夫を解説します。

顔の傷、見える部分の傷を治療するのは形成外科の独壇場と言えます。

しっかりとトレーニングを受けた形成外科医であれば、目立つ部分の傷も最小限の傷あとで仕上げることができます。

①まず大切なことは 「縫合線をできるだけしわの方向に合わせること」です。厳密にいうとしわの方向ではなくRSTL(relaxed skin tension line) つまり、皮膚を緩めたときによる皮膚の細かいしわの方向に合わせるのです。

こうすることで、傷はしわの一つにまぎれますし、傷あとの幅も広がりにくいというメリットがあります。

これは手術の時の切開の場合に生かせる知識です。でも、怪我の場合には、いろいろな方向に切れていますので、難しいこともありますね。

②2つ目に大事なことは、できるだけ皮膚に緊張をかけずに縫合することです。このために我々は皮膚を縫合するときに真皮縫合という皮下縫合を行います。真皮縫合を行って、皮膚の下の真皮同士を合わせておくことで、皮膚表面にかかる力が最小限になり、傷あとの幅が広がるのを防ぐことができます。

③3つ目はなるべく早く抜糸することです。これも糸の痕を残さないために必要なことです。そのためには、3番目の「真皮縫合」をしっかり行っておく必要があります。大体1週間程度で抜糸をすることがほとんどです。口唇など、繊細な場所の縫合の場合には5日目に抜糸を行います。

④4つ目は表層縫合の糸はなるべく細いもの、そして小さく糸をかけること、さらに締めこまないこと、です。

特に大事なことは最後の「締めこまない」ということです。

縫合部にブラックジャックのような細かい糸の痕(私鉄の地図記号のように+++++++)を残さないために大事なことなのです。

縫合された皮膚は術後必ずむくみますので、表層縫合の糸をしっかり締めると、術後には必ずきつすぎる状態となります。だからふわっと縫合するんです。ほかの科の医師からすると「全然締まってないじゃないか、大丈夫?」と見えると思いますが、これが重要なことなんですね。これもしっかりとした真皮縫合を行ったうえでの技術です。

この教えですが、じつは教科書にはあまり書いてありません。私が一番口を酸っぱくしてこのことを指導されたのは、信州大学形成外科の杠教授からです。口唇裂の縫合の極意です。「ぜったいしめるなよ」と。

どんなに細い糸で細かく塗っても締めこんでしまうと必ず糸の痕がついてしまうのです。

もちろん、締めこむことが必要な縫合もありますので、臨機応変に対応する必要があります。

このように繊細な形成外科の技術を患者さん皆さんの身近に提供することが当クリニックの使命であると考えています。

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