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粉瘤はくりぬき法?従来法?どっちなんだい?

院長藤田です。

粉瘤(ふんりゅう)ってご存知でしょうか。アテロームとかアテローマとか言われることもあります。

類表皮嚢腫、表皮嚢腫と言われることもあります。

皮膚の成分が皮膚の中にを作ってしまっている皮膚腫瘍のことです。全身どこにでもできます。

このできものはとてもありふれていて、みなさん一つぐらいは持っているんではないかと思われるほどの頻度です。

皮膚の一部が膨らんで、真ん中に黒いヘソがあり、圧迫すると、くさい白色の内容物がでます。これは皮膚の老廃物、いわゆるアカと油がたまったものです。知ってる方はこのニオイわかりますよね。

この粉瘤ですが、普段困ることといえばちょっと臭うぐらいのことなんですが、一度炎症をおこすとエライことになります。

粉瘤は徐々に大きくなるのが普通ですが、皮膚の中に入っている袋が何らかの原因でやぶれると、自分の体から異物だと認識されて、炎症反応を起こし、一気に痛み、腫れを生じます。

いじっていると腫れる、といわれますが、これはばい菌が入ったのではなくて、が破れてしまった結果なのです。

腫れてしまうと大変辛いので、できれば腫れるまえに手術で取ってしまうのがいいですね。

 

さてここから本題。

「粉瘤 手術」でネット検索すると「くり抜き法(ヘソ抜き法)」というのがでてきます。これは何かと言いますと、従来法に比べて格段に小さな切開で手術できる方法です。

従来法では粉瘤の直径と同じぐらいの切開が必要で、粉瘤のを破らないように、中身が出ないようにしっかり全部取る、というのがコンセプトです。が破れなければ確実に完全摘出できていることになるので、再発が少ない良い方法です。

切開した部分は綺麗に縫合し、1週間ぐらいで抜糸になります。

 

ではくり抜き法ってどんな方法なのでしょう。

粉瘤の本体は、中身のアカと油ではなくなので、そのを効率よく取り出そうというのがくり抜き法です。

まず、粉瘤の真ん中のヘソの部分を4ー5ミリほど丸く切開して、まずそこから粉瘤の中身を押し出します(ちなみに、この時、だいぶ匂います泣)。押し出した後に皮膚の周りをよく揉むと、が一部剥がれて来るため、そのの端を捕まえて、丁寧に剥離し、袋だけを取り出してくるのです。切開が小さいので通常は縫合も要しません。自然に傷が治るのを待つだけです。抜糸も不要です。

ここまで書くとくり抜き法は断然良い方法に思えますね。くり抜き法を推し進めている先進的な先生方はこちらの方が断然良い方法とおっしゃっておられますし。

でもメリットデメリットそれぞれあります。

従来法のメリットは 再発が少ないことです。を完全に取り切るので、しっかり取れれば再発することはほとんどありません。

デメリットは切開の長さが長く、傷跡が長いこと、抜糸に受診しなければならないことです。

くり抜き法のメリットは何と言っても傷が小さいことです。くり抜いた傷跡はニキビの跡程度に小さくなりますので、ほとんど目立ちません。

デメリットはうまくやらないと再発しやすいことと、あまり大きな粉瘤では袋が取り出しにくいことです。

 

実際に私がどうしているか、ですが、

赤く腫れているもの、炎症を起こしてしまったものについてはくり抜き法を行います。これは従来法では手術できないからです。従来は皮膚を切開して中身を出すだけで終わり、炎症がおちついてしばらくしたら切開瘢痕ごと切除する二段階法を行うことが多かったです。しかしくり抜き法であれば、炎症があっても袋をある程度取り除くことができ、その方が炎症の落ち着きも早いことを実感しております。ただし、袋が残ってしまうこともあります。炎症を起こしていると袋自体がモロく、全部摘出するのが難しいからです。

また顔面の目立つ部位で傷跡が目立ちそうな部位くり抜き法を選択する場合があります。とくに口唇などの粉瘤では、傷あとがどうしても目立ちやすいので、くり抜き法を選択することが多いです。

一方

炎症を起こしておらず、確実に切除できそうな、目立たない部位の粉瘤であれば従来法を選択することが多いと思います。もちろん患者さんご本人が求めることが、確実性なのか、傷跡なのかを考慮しますし、ご希望があればくり抜き法を選択します。

また顔でも、頰などの粉瘤で、確実に仕留めたい、しかも、綺麗に縫合できそう、という場合には従来法をオススメする場合もあります。傷が長くてもほぼ目立たなくなることも多いので、あまり毛嫌いしなくてもいい方法だと思っています。

つまり、従来法を行ってもくり抜き法と同じぐらい傷跡を目立たなくできるだろうと見込んだときは、確実性の高い従来法を選ぶ、というわけです。

 

皮膚科医はくり抜き法を好み、形成外科医は従来法を好むと言われています(わたしは形成外科医です)。

おそらく顔でも綺麗に縫えば目立たなくできる、と考えている形成外科医の自信からくる差だと思いますが、その自信がおごりであってはいけません。

くり抜き法はまだ比較的新しい方法です。私も今後もっと鍛錬を重ねてくり抜き法の確実性を上げていく必要があると考えています。

 

診察室では、手術の方法について、こちらから提案しますが、患者さんのご要望もお聞きしますので、診察時におっしゃってみてください。

ではまた。

 

 

 

 

 

 

 

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